根羽沢鉱山

尾瀬国立公園の深山に眠る

忘れられた金鉱山と鉱山街

かつて1000人が暮らした
幻の鉱山街。
尾瀬の深い森に埋もれたその記憶が、
いま静かに語りはじめる。

戦前、群馬・片品村の標高1300mに築かれた
「根羽沢鉱山街」は、金採掘に沸いた一大鉱山集落。
病院・商店・学校・公衆浴場までが揃い、
山中に生まれた都市として1000人以上が暮らしていました。

いま、その遺構が苔むした地に点在し、
自然とともに静かに佇んでいます。
最新の調査資料とともに、その歴史と営みを辿る旅へ――。

根羽沢鉱山とは

根羽沢鉱山は、群馬県片品村の奥地に位置する金銀鉱山跡で、
尾瀬国立公園内の山深いエリアに広がっています。
鉱山関連施設や生活の痕跡が山中各所に点在し、
現在も静かに自然に抱かれながら、その全貌を留めています。

根羽沢金鉱山全図

鉱山街の全図

根羽沢鉱山の歴史

84年の歴史
  • 1902

    横田千之助が根羽沢で金銀石英脈を発見【発端】

  • 1916

    久原鉱業が「粘沢鉱山」として探鉱開始

  • 1931

    千明賢治らによる開発が始まり「根羽沢鉱山」に改称

  • 1935

    三菱金属が買収、本格的な採掘・鉱山街発展開始

  • 1942

    人口1000人超、学校・病院・商店なども整備

  • 1944

    戦時の金山整備令により閉山

  • 1961 1986

    荒川・下川・片品鉱業による再採掘期を経て完全閉山

根羽沢鉱山での暮らしについて

鉱山の発展に伴い、山中には「根羽沢鉱山街」と呼ばれる一大集落が築かれました。生活は地区ごとに区画され、独身者向けの合宿所、鉱夫の長屋、三菱社員用の社宅、そして鉱山長の住宅が斜面に階層状に並びました。

紅葉平地区には、病院や購買所、郵便局、映画も上映された娯楽施設「協和会館」などが揃い、山奥にありながら都市のような暮らしが営まれていました。

鉱夫の住宅想像図

現在の住宅遺構

映画上映もされたという協和会館周辺の想像図

現在の協和会館跡

根羽沢鉱山の見どころ

根羽沢鉱山 Mining Town Map

紅葉平(もみじだいら)地区

鉱山街の中核を担ったエリア。社宅や長屋、分校、映画が上映された「協和会館」などが建ち並び、山中に暮らしの賑わいが凝縮されていました。階段や基礎跡が、今もその都市構造を静かに物語ります。

当時の学校の写真

根羽沢スキー大会の写真

当時の生活道具なども散在している

選鉱製錬場跡

金鉱石から金属を抽出する工程が行われた施設跡で、根羽沢鉱山の産業的中枢。選鉱・濃縮・青化製錬という高度な処理を行っていましたが、稼働していたのはわずか数年でした。今も基礎の残骸が点在しています。

選鉱製錬場の全体図

選鉱製錬場の当時の写真

現在の選鉱製錬場の一部

通洞坑口

鉱石を搬出していた主要坑口跡。かつては架橋と線路が敷かれ、鉱夫たちはこの坑口から山の地下へと出勤していました。現在は閉鎖されていますが、遠望からその姿を見ることができます。

根羽沢鉱山の坑道

かつての通洞坑内の様子

現在の通洞坑内の様子

根羽沢温泉跡

鉱山開発以前から湧いていた温泉で、鉱夫たちの癒しの場として親しまれていました。現在は浴槽跡と錆びたパイプが残り、静かに湯を湧かせ続けています。

当時の温泉の様子

現在の温泉の様子

大薙沢エリア(昭和末期の鉱山跡)

昭和・昭和末期に再稼働した際の鉱滓(ズリ)を積み上げたズリ山やホッパー設備の痕跡が残るエリア。近代鉱業の終焉を象徴する風景として、現代の産業遺構としても注目されています。

80年代の鉱山施設の様子

80年代のホッパーの様子

現在の鉱山の様子

根羽沢鉱山 探索ツアーの ご案内

ポイント
01

プロガイドが案内する“山の野外博物館”

地形や植生、産業構造に精通したガイドが、鉱山遺構に隠された歴史の断片を丁寧に解説。資料や口伝をもとに、現地の地形・痕跡・暮らしを結びつけて案内します。

ポイント
02

かつて千人が暮らした鉱山街を歩く

紅葉平地区では、かつての社宅群・分校・協和会館(映画館)の跡を巡ります。社宅の階層構造や、山中都市としての街の成り立ちを感じることができます。

ポイント
03

通洞坑口や選鉱製錬場跡で知る鉱山技術

金鉱石の搬出・処理を担った施設跡を訪ね、採掘から製錬までの工程や鉱業技術の痕跡を体感。橋の基礎やインクライン跡、選鉱製錬場跡など、現場ならではの視点で学べます。

ポイント
04

根羽沢温泉跡で“湯の記憶”に触れる

鉱山以前から湧いていた温泉。浴槽跡や湧出パイプに触れ、鉱夫たちの癒しの場だった当時を想像します。自然に還りつつある風景とともに、静かな余韻を味わえる時間です。

ポイント
05

安心の装備・少人数制でじっくり体験

少人数制で、参加者一人ひとりにガイドの声が届く設計。雨具や長靴レンタル、昼食付のプランで、登山やハードなトレッキング未経験の方でも参加可能です。